見知らぬ誰かの死を「処理」した話

 

   やはり殆ど日記のような体で使おうとしているブログをですます調で綴るのは気持ちが悪い。

 

   それは兎も角、私のバイト先はコールセンターである。10月入社なので新人もいいとこ ろだけれども。

 

   まだ1ヶ月しか働いていないけれども、オペレーターの仕事は中々面白い。商品の注文の仕方、相槌の打ち方、オペレーターへの態度、話す速度なんかで、顧客の性格や趣味嗜好が丸裸になるのだから。

 

  先日、私は1本の電話を取った。顧客登録のない、不動産の物件担当をしている人物からだった。

 

 「私、株式会社〇〇の物件を担当している〜〜と申します。御社の顧客の△△さんという方亡くなられまして、カタログを止めていただきたいのですが。」概ねこのような感じだったと思う。

 

   私は新人なので、ベテランのオペレーターさんが基本的に近くにいて、何かあれば色々と教えてくれる。私は彼女が耳元で教えてくれる言葉をそのまま復唱した。

 

   「かしこまりました。それではカタログをお止めしますので、お客様のお名前とご住所をお願い致します」という風に。

 

   電話を終えたあと、件のオペレーターさんがパソコンでの手続きを教えてくれた。カタログの欄をストップに切り替え、本人死亡と打ち込む。  

 

   ただ、それだけ。

 

  2、3分にも満たない作業で、亡くなった方、(以下Sさん)の購買履歴も、問い合わせ内容も、全てロックされて、見られなくなってしまった。80年も生きた、Sさんはたったこれだけの作業で、事実上、顧客名簿から消されたのだ。なんだか酷く虚しくなった。

 

   私を憂鬱な気持ちにしたのは、その事務的な作業だけではない。死亡を知らせたのが、業者だったことだ。亡くなった人の家族ではなく。

 

  ベテランオペレーターさん曰く、普通は遺族が電話をかけてくるそう。では、Sさんの場合は何故…。

 

   彼女は亡くなる前、どのように過ごしていたのだろうか。そ家族に看取られて逝けたのだろうか。

 

   暫くSさんの本名も年齢も住んでいた都道府県も忘れられそうにない。